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運動遊びで習得した喜びを思いきり発表する
―運動はなぜ必要なのでしょうか―
「事故を誘発するような危険物を排除する」という考え方は当然のことです。しかし、事故を完全になくすことはできません。
そこで、事故を起こさないような環境作りを始め、子供自身が運動遊びを通して、反射的な行動やバランス感覚を身につけ、それを遊びのなかで習得させることが重要な課題であると認識しています。 決して集中的や特訓的ではなく、毎日少しずつゆっくりと日々の積み重ねを大事にすることで、子供の遊びは次第に発展して情緒も安定してきます。 しかし、運動遊びが増えることは、危険性も増えるものです。 社会には多くの危険物や潜在危険があります。危険物の排除ばかりでは、子供は育ちません。 極端にいえばテーブルの角さえ丸くしなければなりません。それでは子供達は、部屋の中や体を動かさない消極的な活動に追いやられてしまいます。園庭が広々とあっても固定遊具ばかりでは、考える力も育ちませんし、遊びが限定されます。ボールを投げる、地面に倒れる、友達と走る、ぶつかる、クライミングウォールや竹馬から落ちる、一輪車で転倒する、のぼり棒に登る、すべり落ちる、プールで水遊びをするなどの経験を豊富にすることで、全神経を使って自分の身体を護ろうとします。この姿こそが子供本来というより、人間本来の姿だと思います。 5歳になりますと、得意そうな笑顔や時折見せる自信満々の顔は、幼児の顔というより、少年少女の顔つきを彷彿させることがあります。 親自身がかつて子供時代に体験をしていない、しかも親の技量を超える運動遊びの習得に親も保育士も共感し、子供が少々の打撲や擦過傷で弱気な姿を見せても周囲の大人達は、被害者、加害者という分別を持たずに鷹揚(おうよう)な心に変わるようです。これが運動遊びの魅力ともいえます。 さらに運動遊びの特性として、
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本法人の教育・保育で一番心がけていることは、子供の生活や遊びにおいて、子供の自発性や自主性をいかに大切にして、重要視していくべきか、ということです。
くわえて、教育においての遊びでは、子供たちの
「感性」 や「創造性」 が十分に発揮できるように工夫し、子供の意思や発想を重んじることに努めています。 しかし、その思いを持った実践だけでは、どうしても職員の自己満足、自己陶酔の陥穽にはまることは必至です。そのような懸念から、第三者的視点からの評価や批評を受けなければ、真の教育・保育への改善もなく前進することも望めません。
そこで、子供達の
「面白い」「不思議だな」「どうしてだろう」「やってみよう」「調べてみよう」 という自発や自主の声を受け止め、「ソニー教育財団」が主催する「子供の科学する心を育てる」というコンテストに日頃の実践の経過や結果、成果を文書化して挑戦しています。こうした「よいこのもりこども園」のチャレンジが始まってから早、16年も経過しました。そこには、子供たちに対するモチベーション(動機づけ)への課題だけではなく、「保育教諭の専門性の向上」 という課題と「教育・保育の質や専門性とは何か」 、という厳しい自己評価がなされている、ということです。 本園では、これまでに
「優秀プロジェクト園、優秀園、奨励園」を受賞し、保護者会も含めて表彰され、教育費の助成を受けました。 ここに今まで実践したことをご紹介いたします。 |
平成28年度 優秀園 |
『食べるの大好き~ |
平成27年度 奨励園 |
『「育てる」体験から学ぶ』 子供達が『カイコ』を見たことから「飼ってみよう」ということになり、最後は繭から糸を紡ぐことができ、『生き物の不思議さ』に感動した体験になりました。『命を大切にする心』も芽生えました。 |
平成26年度 奨励園 |
『飛べ!ペットボトルロケット』 空気や水の力で飛ぶ『ペットボトルロケット』をどうすればより遠くに飛ばせるか、子供同士で話し合い、工夫し、実際に試しました。空気入れを使い、水しぶきを浴びながら挑戦する楽しい体験でした。運動会の開会式に打ち上げて、保護者から大きな拍手をもらい達成感を味わったことでした。 |
平成25年度 奨励園 |
『太陽って不思議だね』 カメラのレンズの光が反射して天井に映ったのを子供達が追いかけたことから「光を集めよう」という遊びが生まれました。年長児は影が動いていくことに気づき、太陽に興味を持ち『日時計』を作ったり、図鑑で調べたりすることで、太陽の不思議さを見つけました。 |
平成24年度 奨励園 |
『自立心を培うキャンプ』 年長児は自分達でかまどで火をおこし、ご飯を炊くことに挑戦し、「どうしたら火が早く起こせるか」考え工夫して、薪を選んだり、火吹きだけを使ったりの体験をしています。キャンプで、食事作りや片付けなどを通して「何でも自分でできる」という自信をつけ、考えて行動する面白さ、楽しさを味わいました。 |
平成14年度 優秀プロジェクト園 |
『自然と遊ぼう』平和台探検隊 子供達は、園から3キロの道のりを往復歩いて平和台公園に行き、広大な森の中を探検し、自然の中での昆虫や植物の様子を見て触れて、面白さ、不思議さを全身で感じ取っています。鳥の鳴き声、土の匂いなどまさに5感が反応し豊かな感性が育っていきます。本園の環境教育の中心として20年来継続している子供の大好きな取り組みです。 |
平衡感覚を醸成する遊び (4歳児~5歳児対象) ―転倒して顔面を打つ子供?―
『最近の子供が起こした事故の様子を調べてみると、転倒する瞬間には手をつかず、いきなり顔面を打つ事例が多い』という報告が、10数年前?に幼稚園や保育現場から発生し、その声は全国的に広がり、真偽の確証もない中、新聞にまで報道されたことがあります。 私は、このときから人の神経の発達は、突然に降りかかる脅威や危険に対して、本能的に防御する反射姿勢(反射神経)がわずか数年に著しく退化や後退するのであろうか、とかなり強い疑念を持っていました。 3歳を過ぎた子供が運動遊びのなかで、転倒したとき、「顔面が手よりも先に地面に着く」という事故が実際に多いという現実があるなら、検証することが必要であると感じていました。そこで平衡感覚を必要とする、「一輪車」「鉄棒の前回り、後回り」「竹馬」「マット運動の前転、後転」はバランスを欠いたとき子供はどのような身のこなしをするのであろうかと観察をすることにしました。 子供がこれらの遊びに対する時には、「転倒するのではないかと、不安な気持ちや緊張している場合は怪我もほとんどなく、「転倒する状況を観察する」という状況にはありませんでした。だいたいケガする時は、道具や遊びになれてきたときで、道具の操作もうまく操作できようになったときで、自信や過信が生じた時に起きることが多いようです。 子供たちが転倒する現状を見て確信したことは、決して、手を地面につけないで顔面を打つという姿はなかったということです。すなわち、人間の本能的な反射作用で手が先に地面に着き顔が後からあたるようですが、腕の力がまだ弱いために上半身を支えることができないということがわかりました。 ―強制しない平衡感覚あそびー
3歳未満児が遊びにむかう特徴的姿は、初めて経験する遊びにはきわめて慎重だということです。また、この時期は大脳が未分化のために平衡感覚の遊びや不安を感じさせる遊びを導入させることにはあまり意味がないように思われます。しかし3歳近くなると4、5歳児の遊んでいる光景を見て真似をすることが増えるようになり、慎重ながらも積極的にかかわりを持つようになります。 4、5歳に限らず子供の運動機能の発達は、適切な刺激を与えることが重要であり、その刺激とは、「訓練する」というより「あそび」という形態にもっていくことが大切だと感じています。 この時期に体力、持久力、筋力をつけることを目的とした一斉的な運動遊びを取り入れることは、強制的な遊びではないと言いながらも、保育教諭は、無意識に体力・持久力・筋力をつけるような運動をさせることが見受けられます。それが子供にとっては、負担となり、いわゆる特訓の弊害が表れることを懸念します。実際には、子供自身が積極的に運動遊びに興じることや、あるいはひとつの運動遊びを身につけて、それを子供自身が次の運動へ展開していくバネになるように考えていかなければなりません。 あくまで子供の興味から生じる自発性や自主性を大事にすることを大前提して「おもしろそうだ」「やってみよう」という動機づけが必要です。平衡感覚の遊びの導入時期は、心身の個人差が少なくなり、友達との関係を十分意識するようなる4歳から5歳が一番適当なようです。 動機付けである「やる気を起こす」指導のタイミングが要るわけですが、その「やる気」が起きる年齢は、4歳から5歳くらいです。「やる気を起こす」と見られる兆候として、「自己顕示欲」である「負けん気」、「優越感」、「自負心」、「競争意識」が表れるときです。実際では喧嘩、ねたみ、そねみの心が生まれるときであり、それはちょうど4歳ころから見られるので、その感情をうまく保育教諭が組みとってあげることで成功への道へとつながるようです。子供も保育教諭も喜びを感じることでしょう。つまり共感することです。 さらにこの時期には、自己主張が明確になり、考慮しながらかかわることで「やる気」を引き出すことができます。つまり相手の持っているものが気になってくる「所有欲」が芽生えてくることも功を奏するようです。 この年齢が、「平衡感覚」を体得させる有効な時期ではないかと確信することは、「一輪車」や「鉄棒の前回りや後ろ回り、逆上がり」、「竹馬」、「インラインスケート」等を体得して卒園した子供と、そうでない子供が共に10歳頃を過ぎて比較してみると、大方その差が無くなっているというより、園生活の延長線上にあることを感じます。その要因には、小学校にあがってもこのような習得できる環境や学習の機会が与えられていないということがわかりました。 子供の精神発達には、内なる準備期(レディネス)の存在を無視することはできませんが、基礎的な運動能力を高める遊び、つまり「平衡感覚」の習得が必要なことは確かなようです。 這う、つかまり立ち、歩く、走る、片足で跳ねるなどの運動発達が子供の生活空間を広げ、さらに子供が新しい刺激を求めて、最終的には自分の身体を自由にコントロールし表現できることが、知的発達にもつながるようです。子供の運動発達を多くの場面で感じることは、運動遊びを楽しむ子は知的発達と好循環回路でつながっているように思えます。 ―「一輪車」での遊びの展開―
5歳を過ぎると「鉄棒の逆上がり」では特に、背筋、腹筋、腕の力が発達してくるので、上手になります。まさに身体のバランスを保つ運動を提供するには適した年齢ということです。 先に述べましたが、小学校では学習指導要領で鉄棒の逆上がり等の扱いが柔軟になってきており、また保護者から、子供が家に帰って「腕が痛い」「おなかが痛い」など筋肉の痛みを訴え、加えて親も教師に対して強い要望をするためか、次第に運動の学習の機会が少なくなり、高学年になっても約6割以上の児童が鉄棒の逆上がりや前回りができないという報告があります。 「平衡感覚」を養う遊びを含めて、すべての遊びに入る事前配慮や管理としてはまず①子供の遊びを誘導できるような「環境」を整えること。 ②「道具」の点検を怠らないこと。一輪車では、空気圧は良いか、ペダルや車輪のハブから異音はないか、子供の身長からサドルの高さ調整は良いか。竹馬では、足を乗せる馬がぐらついていないか。鉄棒では、鉄棒が濡れていないか。扱う道具が年齢や身長に適しているか。 ③「服装」の点検を行う。子供は冬でも半袖と半ズボンで過ごすこと。平衡感覚を安全にしかも早く体得するためには、靴より、裸足で行う。 特に「竹馬」や「一輪車」では足の指を使うことを子供が体得すると自らが靴を履くことを嫌がるようになります。 鉄棒では、衣服がルーズだと鉄棒に巻きついて上手に回ることができず、しかも危険です。ズボンのゴムの緩みも危険です。 当園では、この遊ぶ前の3つの課題である「環境」・「道具」・「服装」を「3大課題」としています。 ―平衡感覚の遊びの効果―
「一輪車」「鉄棒の前回り、後回り」「竹馬」「マット運動の前転、後転」「インラインスケート」を取り組んだ効果としては、毎年40名程度の卒園児を送り出して20余年あまりになりますが、大きなケガはまったくありません。 平衡感覚の遊びは、靴を履いて行うより裸足で取り組むことのほうが習得は早いことを自らが学びます。雪の降らない当地では、フルシーズンで取り組むことができ、素足の感覚で習得できることが身につくと真冬でも裸足と薄着を好むようになります。特に「竹馬」は、足の裏や指を駆使することで、「土踏まず」の形成は顕著です。 少々高いところから落ちても「土踏まず」がバネの役目を果たしているためか、平然としています。通常では子供同士のぶつかりもあって、足に擦り傷や打撲は当然のようにできますが、先にのべたように決して、顔面だけを大きく打つことはありません。 冬の2月と3月は、約10kmのサイクリングに出かけます。途中、ブレーキをかけ損なって、転倒し深い擦り傷ができても園に意気揚々と帰ってくる姿がとても不思議です。 いつも人間関係でメソメソすることはあっても、自転車操作を誤り、転倒しケガしても泣くことが少ないということは、「楽しい」という満足感や征服感が言わせているようです。 保護者も通常なら「うちの子の顔の腫れは友達からぶたれた」「この擦過傷は保育教諭の怠慢が原因」であるなど、相手との関係によって生じたものであれば必ず苦情が出るのですが、苦情が発生しないのも子供自身の得意顔や自転車に乗れたという成長した証を、親も共有共感しているからだと思うのです。 (1)事故から身を護るということ
「事故を誘発するような危険物を排除する」という考え方はとても大事です。しかし、園がヒヤリハットの事例を多く作成しても、完全になくすことはできません。 事故を起こさないように子供自身にバランス感覚を身につけることや、反射的な反応を習得させることがより重要な課題であると認識しており、多くの運動遊び 社会には多くの危険物や潜在危険があります。危険物の排除ばかりでは、極端にいえばテーブルの角さえ丸くしなければなりません。それでは実に消極的な活動に追いやられてしまいます。園庭が広々とあっても固定遊具ばかりであっては、子供本来の自発的な運動遊びにつながりません。 地面に倒れる、友達と走る、ぶつかる、こける、竹馬から落ちる、一輪車で転倒する、のぼり棒に登る、すべり落ちるなどの経験をしながら全神経を使って克服していく姿こそ、子供本来の姿だと思います。 得意そうな笑顔や時折見せる自信満々の顔は幼児の顔というより、少年の顔つきを彷彿させます。親自身がかつて子供時代に体験をしていない、しかも親の技量を超えていることに親も共感し、少々の擦過傷でも鷹揚に構えてくれるようになります。 運動あそびや平衡感覚を取り入れた遊びの特性として、①身体を発達させ健康になる。②運動に興味がわき運動能力を発達させる。③想像力、考える力がつく。④情緒の安定を図ることができる。⑤友達と一緒にあそぶことで社会性が身につく、と言われていますが、もうひとつ付け加えたいことは、事故や危険から身を護る力をつける。このことも大きな特性であるようです。 転倒や転落があってもケガを最小限にとどめる積極的安全性、いわゆる「アクティブ・セフティー」を求めるカリキュラムが重要です。事故にあわないように配慮する安全性と事故にあっても極力、大きな危険から回避できる運動能力性を持ちあせる身体作りは、リスクマネジメントのひとつに加えたい事項だと思っています。 (2)土踏まずの形成について
登園してくると毎日、腰に歩数計(表4)をつけることが日課となっていますが、3歳では平均3kmは歩けるようになります。4、5歳になると月に1、2回は、自然探索活動のために園外の広大な自然の森のなかへ出かけます。園に帰って来て1日を過ぎると平均10km位は歩いているようです。 裸足で行っている平衡感覚の遊びとともに、戸外での楽しみながらの歩行は、自然に足腰を強くし、土踏まずの形成を早めるようです。土踏まずの形成は、急に止まる、跳ぶ、走る、踏ん張るという状況のときにとても重要な働きをします。土踏まずの形成は、一般に8歳から10歳といわれていますが、平衡感覚や歩行などを意識的に取り入れるだけで、4歳から5歳にかけてその完成を見ることができます。年度途中入園児で、運動に興味を示さない子供や、園外保育に出かけることを嫌う子供は、多くの理由をつけます。「腕が痛い、頭が痛い」、「○○君が背中を押すから」と言い訳をしますが、そのような理由をつけるほとんどが、「土踏まず」ができていない子供に多く観られるようです。 私達は土踏まずの形成ができていないために戸外活動を嫌がるのではないかとの判断をしています。 図1(土踏まずの形成記録)は土踏まず形成の発達の経緯を表したものですが、図2(土踏まずの個別の記録から)は、運動遊びの刺激を受けた子供と、刺激を受けなる機会がなかった子供との比較です。 |
●平和台探検隊 | ●食育 | ●夕食後の遊び |
●おじいちゃんおばあちゃんと遊ぼう |
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【よいこのもり幼保連携型認定こども園】 |
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〒880-0023 宮崎県宮崎市和知川原3丁目13-1 電話:0985-29-0077 FAX:0985-29-0961 E-mail:yoiko@shuhari.or.jp 定員:125名 年齢:乳児から就学前まで 保育時間:午前7時~午後6時 延長保育:午後6時~午後8時 一時預かり保育事業(幼稚園型) 地域子育て支援事業 障がい児保育事業 お仕事していない方も入園できます。 |
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予防接種について
お子様への予防接種を希望されない場合、入園をご遠慮いただく場合があります。 |